さて、やっと家に着いた。ガレージを開け車を止めて降りた。10数歩歩いて家に入り、洗濯機の中に道着を入れた後、2階のリビングに行こうと階段に足をかけた。あれれ?何故か階段が登れない。左足は階段を踏むのだが、右足に力が入らずよろけて手すりにもたれてしまう。そのままずるずると倒れ込みそうだ。右手も力が入らず、階段の下で倒れ込んだ。何とか起き上がりまた昇ろうとするが同じこと。2,3度繰り返したが、ついに右手も手すりを持てなくなり、階段の下のホールに大の字に倒れこんでしまった。
何やらおかしい、と思うべきなんだろうが、脳みそもどうも朦朧としているんだろう。ただひたすら起き上がることしか意思できなかった。大の字の仰向けから左半身だけは起こせるが、右半身が動かず、何度も起き上がろうとしたが体を斜めに少し起こす程度にしかできなかった。
そうこうするうちに妻が下りてきて声をかけた。最初は何をしているのか不思議だったろう。大の字に寝て悶々と起き上がろうとしていてどうにもならない俺の風情を把握するや否や、息子に救急車を呼べと指示した。俺の表情はボーっとしていたと思う。ボーっとしたまま起きようとすることを繰り返していた。
妻も慌てたのか「110番!救急車」と息子に言った。息子そのまま110番回した後で、妻は間違いに気付き、電話を取りあげて119番をダイヤルした。その間、「パパをじっとさせていて」と息子に新たな指示。
俺の方はようやく起き上がろうとするのを諦め、右半身が効かないことを自覚し、寝たまま体をひねり左手で右手を掴んで持ち上げてみた。全く別の物体を持ち上げているようだった。
息子は俺の動きを止めようとして、さりとて恐いのか、あるいは汗だくの俺が気持ち悪いのか、失礼にも人差し指の先だけで俺の額を押さえて床に固定しようとしていた。
俺の方はもう観念。押さえられるままにじっとしていた。それから1分くらいだろうか、右手が動き出したのを実感した。体を起して床に座る態勢にまでできた。右足も動くようだ。立ち上がることもできた。
さて、救急車呼んだので、救急車が来るまで待っていないといけない。そのまま玄関のホールで座り込んで待っていた。
救急車の到着。妻からの説明、俺への事情聴取の後、担架に乗せられてそのまま病院へ。
もう既に自分の足で歩けるし脳みその朦朧とした所もなく、またベッドに横たえられたが普通の受け答えである。
医者はそれなりの問診と、血圧チェック、心電図チェックしたのかどうかは忘れたが、点滴をセットアップして、入院とあいなり病棟に運ばれた。
既に完全に回復していたので、それ以降の1週間の入院は時折の検査があるだけで退屈極まりないもんだった。
退院時の診断は、血栓もないし血液中コレステロールも正常値だし、運動により汗を一杯かいた結果の脱水により血液がドロドロと濃くなり、結果脳の血流が悪くなったということ。せいぜい言えばCT造影による脳の血管はとげとげしていて固そうだ、と。ついでに言えば、ビールは利尿作用があり、結局脱水効果であるし、昼寝したことも脱水である。人は寝ている時に意識しない汗で水分を出してしまうので。夜寝る前と朝起きた時の体重を比べると歴然として、朝起きた時の方が1K弱軽い。
そのように脱水に向けてすべてが重なった日であった。
この一過性脳虚血発作の前後で大きく変わった点は、空手稽古において無理ができなくなったことだ。かなり注意して計画的に水分補給をするようになったが、それでもぎりぎり持つか持たないまでの稽古はできなくなった。2分息上げの為のサンドバッグやキックミットトレーニングをしても、それくらいは大丈夫だが、次のラウンドに行く前に息を十分整えられるだけの休憩をとること。ヒーヒー言いつつ連続してやるのは止めよう、である。
すべてが重なって初めて起きたこととは言え、やはり注意せねばと思う。
今から一年前の話でした。
御同輩、倒れるまで根性出して練習すれば、昔は強くなったが、年をとった今は本当に倒れてしまうので、ご注意!である。
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